音声資料
「織田ステノさん口演:家の守り神さまに天に召された村長の娘が自らの体験を物語る」

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1 織田 ステノさん アコㇿ ハポ アン アコㇿ ミチ アン a=kor hapo an a=kor mici an 私の母がいて、父がいて、

2 織田 ステノさん ユポ… yupo … 兄は…

3 織田 ステノさん アコㇿ ユポアナㇰ エキㇺネワ アコㇿ ミチ アコㇿ ハポ イヌクㇽパㇷ゚ ネクㇲ a=kor yupo anak ekimne wa a=kor mici a=kor hapo inukurpa p ne kus 私の兄は狩りに行って 私の父母は 体が不自由なものなので

4 織田 ステノさん チャロ アノイキ アノカアナㇰネ チセ オッタ オカアンマ スケアンカ キ チセ オㇱケ アチャㇱヌカ caro an=oyki (1) anoka anakne cise or ta oka=an wa suke=an ka ki cise oske a=casnuka 私たちが養っていた。私は 家にいて、料理もし、 家の中も片づけ、 (1) an=oiki にも聞こえる。

5 織田 ステノさん ネㇷ゚タ ラタㇱケㇷ゚ アカㇻ トイタウシ アンコンノ トイタアンマ nep ta rataskep a=kar toyta usi an konno toyta=an wa 何か混ぜ煮料理を作った。 畑仕事をする時期になると

6 織田 ステノさん ウサアマㇺ ウサシト ネ アマㇺ ウサラタㇱケㇷ゚ネㇷ゚ アエトイタワ アネモニピㇼカ usa amam usa sito ne amam usa rataskep ne p a=etoyta wa an=emonipirka 穀物や団子の材料になる穀物、 混ぜ煮料理となるものを私は植えて 作物を上手に育てた

7 織田 ステノさん ポロンノ ネㇷ゚ネヤッカ アエパワ poronno nep neyakka a=epa wa たくさん、何であっても収穫して

8 織田 ステノさん ポロンノ スケアンマ アコㇿ ハポ アコㇿ ミチ アイペレコンノ poronno suke=an wa a=kor hapo a=kor mici a=ipere konno たくさん料理して、 私の母と父に食べさせていたところが

9 織田 ステノさん ネコンカ フㇺアㇱコンノ イムイムアン (2) nekon ka hum'as konno imuimu=an 何か音がすると 私はイムをした。 (2) 物に驚いたりして、あらぬことを口走ったり、手を震わせたりするような状態になること。

10 織田 ステノさん アンエラムトゥイワ ネコンカ テㇰチャリチャリアン イムアンワ an=eramutuy wa nekon ka tekcaricari=an imu=an wa 私は驚いて どのようにか手を振り回し イムをして

11 織田 ステノさん ネアンペ アコㇿ ハポ アコㇿ ミチ アコㇿ ユポ クㇲケライポ ミナカネ オカ nean pe a=kor hapo a=kor mici a=kor yupo kuskeraypo mina kane oka それを私の母、父、 兄は見て それで笑っていた。

12 織田 ステノさん アコㇿ ユポ ハウキ ハウ エネ アニ 「アコットゥレシ a=kor yupo hawki haw ene an hi "a=kor turesi 兄が言うことにはこういうことであった。 「妹よ、

13 織田 ステノさん エイムクㇲ アネヌチャㇰテㇰ e=imu kus an=enucaktek お前がイムをするので楽しい。

14 織田 ステノさん ネㇷ゚クㇲ エクㇲコンナ アナ アン イム エキ シリ エネ アニ アン」 アリ nep kus ekuskonna ana an (3) imu e=ki siri ene an hi an" ari どうして突然こんなふうな イムをするようになったんだ」 と、 (3) ana an は未詳。ene an 「このように」と言うつもりだったと解釈する。

15 織田 ステノさん アコㇿ ハポカ アコㇿ ミチカ イェ a=kor hapo ka a=kor mici ka ye 母も父も言った。

16 織田 ステノさん 「アマッネポ イム クㇲケライポ ミナアン」 "a=matnepo imu kuskeraypo mina=an" 「娘がイムするのが おかしい」

17 織田 ステノさん アリ アコㇿ ハポ アコㇿ ミチ ハウキコンノ スイ ari a=kor hapo a=kor mici hawki konno suy と 母も父も言うと また

18 織田 ステノさん ネㇷ゚タカ カㇷ゚タカ アイェワ テㇰチャリチャリアンコンノ ポオ アコㇿ ミチ アコㇿ ハポ エミナカネ オカイペ ネアㇷ゚ nep ta ka kap ta ka (4) a=ye wa tekcaricari=an konno poo a=kor mici a=kor hapo emina kane okay pe ne a p 何かかにか私は言って 手を振り回した。すると なお一層、父も母も それを見て笑ったものであった。ところが、 (4) nep ta ka は「何・か・か」。kap ta ka は未詳。

19 織田 ステノさん シネアントタ アコㇿ ユポ エキㇺネイネ ホシピイネ ハウキ ハウ エネ アニ sinean to ta a=kor yupo ekimne hine hosipi hine hawki haw ene an hi ある日、兄が 狩から戻って 話した事がこうであった。

20 織田 ステノさん イペアニネ シッチャㇱヌカアニネ ニサッタ クンネホプンパアンヤクン ipe=an hine sitcasnuka=an hine nisatta kunnehopunpa=an (5) yakun 食事をして片づけをして 明日の朝の暗い内に起きたら (5) kunne は「夜」 hopuni は「起きる」(複数形)。kunnehopunpa は未詳。

21 織田 ステノさん ナニ スホコオッテアン エアㇱカイクニネ nani suhokootte=an easkay kunine すぐに、 鍋を火に掛けられるように

22 織田 ステノさん アカリネ モナアアナクㇲ a=kar hine monaa=an akus 用意して待っていたら

23 織田 ステノさん 「アコットゥレシ イタㇰアンチㇰ エイヌ カトゥ エネ アニ "a=kor turesi itak=an cik e=inu katu ene an hi 「妹よ話があるから 良く聞きなさい。

24 織田 ステノさん タンアコㇿ ペッ トゥラシ エオマンアイネ tan a=kor pet turasi e=oman ayne この私たちの川に沿って上流に 行って行き着いたら

25 織田 ステノさん オコイカウン ポロ ナイ okoykaun poro nay 東の方に大きな谷川が

26 織田 ステノさん ポロ ペッ オルン アリ プトゥフ アン ルウェ ネナ poro pet or un ari putuhu an ruwe ne na 大きな川の所に こうして注ぎ込んでいる所があるのだよ。

27 織田 ステノさん ネナイ トゥラシ エオマンヤクン ナイ エトㇰタ ne nay turasi e=oman yakun nay etok ta その谷川に沿って上流にお前が行ったら 谷川の先に

28 織田 ステノさん タㇷ゚ アンカㇻ チセ オッタ tap an=kar cise or ta 最近建てられた家の所に

29 織田 ステノさん カムイ オッカイポ シノ ラメトㇰ アン ルウェ ネナ 「ニサッタネ kamuy okkaypo sino rametok an ruwe ne na "nisatta ne 神の若者、本当の勇者が いるのだよ。 『明日になったら

30 織田 ステノさん シネウェクㇲ サンヤㇰ ピㇼカ」 アリ i... sinewe kus san yak pirka" ari 訪ねに おりてきてください』 と

31 織田 ステノさん エハウキ ナンコㇿ」 アリ e=hawki nankor" ari お前は言うのだ」 と、

32 織田 ステノさん エクㇱコンナ アコㇿ ユポ ハウキ ekuskonna a=kor yupo hawki 突然兄が言った。

33 織田 ステノさん タネ パㇰノ オカアニケカ tane pakno oka=an hikeka 今まで暮らしていても、

34 織田 ステノさん ニナクㇱ タア ハンケ ハンケ パイェカアンヤッカ ペッ トゥラシカ nina kus taa hanke hanke (6) payeka=an yakka pet turasi ka 薪を取るために こう近く近くを 歩いたことはあっても 川の上流に (6) hanke は「近い」という動詞または「近く」という副詞だが、重複した場合に意味がどのように変わるかは未詳。9行あとのtuyma tuyma も同様。

35 織田 ステノさん パイェカカ アネラムㇱカレㇷ゚ ネㇷ゚クㇲ エネ ニサッポネ payeka ka an=eramuskare p nep kus ene nisappone 行ったことも なかったのに 何のためにこのように突然

36 織田 ステノさん アコㇿ ユポ ハウキ ハウェ エネ アニ アン アリ ヤイヌアンコンノ a=kor yupo hawki hawe ene an hi an ari yaynu=an konno 兄は 話すことなのか と私が考えると

37 織田 ステノさん アコㇿ ハポ アコㇿ オナ チㇱカネ a=kor hapo a=kor ona cis kane 母も父も泣きながら

38 織田 ステノさん 「ソンノ イラㇺキッタ タネ パㇰノ トゥイマ トゥイマカ "sonno iramkitta tane pakno tuyma tuyma ka 「本当に驚いた、今まで 遠くへ遠くと

39 織田 ステノさん アㇷ゚カㇱカ エラムㇱカレㇷ゚ アンマッネポ ネイケ アンポホ ネㇷ゚ イェ ハウェ クロマトタ apkas ka eramuskare p an=matnepo ne hike an=poho nep ye hawe kuromato ta 歩いたこともなかったものが この娘であるのに 息子は何を言うのか 夜に

40 織田 ステノさん ウイテㇰ ハウェ エネ アニ アン ニサッタ シㇼペケㇾワ オㇿワ uytek hawe ene an hi an nisatta sirpeker wa or wa 使いに出す話が このようにあることか。 明日、夜が明けてそれから

41 織田 ステノさん エトゥレシ エウイテㇰヤㇰ ピㇼカイケ エネ クロマトタ e=turesi e=uytek yak pirka hike ene kuromato ta 妹を使いに出すと良いのに こんな夜に

42 織田 ステノさん エハウキイ アン」アリ アコㇿ ミチ アコㇿ ハポ ハウキイケカ アコㇿ ユポ e=hawki hi an" ari a=kor mici a=kor hapo hawki hikeka a=kor yupo お前は言うのか」と 父母は言ったが 兄は

43 織田 ステノさん 「クロマトタ アコットゥレシ アㇷ゚カㇱ ソモ キヤカナㇰ ウェン ルウェ ネ "kuromato ta a=kor turesi apkas somo ki yakanak wen ruwe ne 「夜に妹が 行かねば 駄目なのだ。

44 織田 ステノさん タッノイェアンマ ポロンノ アンナ タッ ウフイカワ スネ コㇿワ ペットゥラシ tatnoye=an wa poronno an na tat uhuyka wa sune kor wa petturasi 樺の木の皮をたくさんねじってある。 樺の木の皮を燃やして松明にして 川を遡って

45 織田 ステノさん ホクレ ホクレ エオマンマ エㇺコタ エサンナンコンナ」 アリ アコㇿ ユポ ハウ… hokure hokure e=oman wa emkota e=san nankor na" ari a=kor yupo haw… さあさあ行って さっさと下りてこい」 と兄が言…

46 織田 ステノさん ウェン シㇼクㇽアンテ アコㇿ ユポ ピㇼカ サンペ コㇿワエンタ クロマトタ イウイテㇰ ハウェ エネ アニ アン アリ ヤイヌアンカネ wen sirkur'ante a=kor yupo wen... pirka sampe kor wa enta kuromato ta i=uytek hawe ene an hi an ari yaynu=an kane おどろいた、兄が、 良い心がけを持ってか 夜に私を使いに出す話が このようにあることか。 と考えながら

47 織田 ステノさん ピカン シピニ アコテッカンカリ シピニアニネ タッ… pikan sipini a=kotekkankari (7) sipini=an hine tat … 手早く身支度を 整えながら私は身支度をして (7) 久保寺逸彦(編)(1992)『アイヌ語・日本語辞典稿』の kotekkankar iの項に「手早く整える」とある。前の行の pikan sipini から始まる常套表現。

48 織田 ステノさん アンノイェ タッ ポロンノ アンペ ネクㇲ テㇺコロ アアニイネ an=noye tat poronno an pe ne kus temkoro a=ani hine ねじった樺の皮が たくさんあるので 一抱え持って

49 織田 ステノさん ソイタ ソイェンパアン タッ アウフイカワ スネ アカㇻワ soy ta soyenpa=an tat a=uhuyka wa sune a=kar wa 外に出た。 樺の皮を燃やして松明にして

50 織田 ステノさん スネ アリ アカリケカ sune ari a=kar hikeka 松明をこうして作っても

51 織田 ステノさん ニ チョㇿポㇰ アリ インカㇻインカㇻアン ni corpok ari inkar'inkar=an 林の中を こうしてちらちら見て

52 織田 ステノさん スネ サㇰノ アリ シキㇼパアンコンノ sune sak no ari sikirpa=an konno 松明無しにこうして向くと

53 織田 ステノさん ペッ オㇱケカ シㇼマㇰナタラ pet oske ka sirmaknatara 川の中も明るくみえる

54 織田 ステノさん アリ インカㇻアンコンノ ニタイ チョㇿポㇰ ネㇷ゚ キキㇼ モコㇿヤ… モコㇿワ オカ ルウェカ アンヌカㇻカネ ari inkar=an konno nitay corpok nep kikir mokor ya ... mokor wa oka ruwe ka an=nukar kane こうして私が見ると 林の中に 何か虫が眠るか… 眠っているのも私は見ながら

55 織田 ステノさん スネカ アンカㇻカ ソモ キ sune ka an=kar ka somo ki 松明ももたずに

56 織田 ステノさん シエトクン インカㇻアンコンノ アㇷ゚カㇱアヌシ シㇼマㇰナタラ テㇾケアニネ ペッ トゥラシ パイェアンアイネ sietok un inkar=an konno apkas=an usi sirmaknatara terke=an hine pet turasi paye=an ayne 自分の行く先を見ると 私が歩くところは明るく開けていた。 飛んで走って 川を遡っていったあげく

57 織田 ステノさん ヤット トオ キㇺタ パイェアンコンノ ソンノカウン アコㇿ ユポ イェ コラチ オコイカウン エコイポㇰウン yatto (8) too kim ta paye=an konno sonnokaun a=kor yupo ye koraci okoykaun ekoypokun ずっと向こうの山に行くと ほんとうにか、兄が言ったように 東側に 西の方へ (8) yatto は未詳。

58 織田 ステノさん プトゥフ アン ナイ ポロ ナイ アンマ putuhu an nay poro nay an wa 河口がある谷川が 大きな谷川があって

59 織田 ステノさん シペトルン ナイ チャㇽコㇿワ アン ルウェ シエトクン アンヌカㇻ トオニ オモウン sipet or un nay carkor wa an ruwe sietok un an=nukar toon hi omoun 大川の所に 河口を持っている様子を 行く手に見た。 あそこのことか、

60 織田 ステノさん アコㇿ ユポ イェ アリ ヤイヌアンカネ テㇾケアニネ パイェアン… a=kor yupo ye ari yaynu=an kane terke=an hine paye=an … ひょっとして兄が言ったのは、 と考えながら飛んで走って 行って、

61 織田 ステノさん シエトクン インカㇻアンコンノ アンシキ エトコ マㇰナタラワ sietok un inkar=an konno an=siki etoko maknatara wa 行く手を見ると 私の目の先は明るく開けていて

62 織田 ステノさん ナイ プトゥフカ ピㇼカ ルウェ シエトクン アンヌカㇻペ ネクㇲ nay putuhu ka pirka ruwe sietok un an=nukar pe ne kus 谷川の河口も立派な様子を 行く手に見るものであったので

63 織田 ステノさん パイェアニネ ネナイ トゥラシ テㇾケアニネ パイェ… リキㇷ゚アン paye=an hine ne nay turasi terke=an hine paye ... rikip=an 私は行って その谷川に沿って飛んで走っていって 登っていった。

64 織田 ステノさん ヤット パイェアンアイネ ナイ エトコタ シレパアン yatto paye=an ayne nay etoko ta pa... sirepa=an ずっと私がいったあげく 谷川の先にたどり着いた。

65 織田 ステノさん ピㇼカノ インカㇻアナクㇲ pirka no inkar=an akus 良く見てみたら

66 織田 ステノさん ナイ エトㇰタ ピㇼカ キヌㇷ゚トイ アンコンノ nay etok ta pirka kinuptoy an konno 谷川の先に 立派な山の野原があって、すると

67 織田 ステノさん キヌㇷ゚トイ ノㇱキタ タㇷ゚ アシッチセ アンカリネ kinuptoy noski ta tap asir cise an=kar hine 山の野原の中に最近 新しい家が建てられていて、

68 織田 ステノさん エアットゥコンノ eattukonno なんとまあ

69 織田 ステノさん チトゥマㇺコユプ チキタイコユプ アシㇼ チセ cim... citumamkoyupu cikitaykoyupu asir cise 家の壁が締められていて 家の屋根も締められている 新しい家に、

70 織田 ステノさん スプヤ アッ アリ インカㇻアナクㇲ アイシケトコ ペケㇾペ ネクㇲ インカㇻアナクㇲ スプヤ アㇱカネ シㇼキ supuya at ari inkar=an akus an=siketoko peker pe ne kus inkar=an akus supuya as kane sirki 炊事の煙が立っていた。 こうして見てみたら 私の目の前が明るいものであるので 見てみたら 炊事の煙が立っている様子があった。

71 織田 ステノさん チセ ソイタ パイェアニネ インカㇻアン cise soy ta paye=an hine inkar=an 家の周辺に行って 見た、

72 織田 ステノさん シエトクン インカㇻアニケ sietok un inkar=an hike 目の前を見たところ

73 織田 ステノさん チセ ソイエネ コポンチ シネㇷ゚ ハチンルウェカ イサㇺ cise soy hene koponci sine p hacir ruwe ka isam 家の外でも ごみ一つ落ちている様子もない。

74 織田 ステノさん シノ ユㇷ゚テクタㇻ オカウシ ネ sino yuptek utar oka usi ne 本当に働き者たちがいるところだ、

75 織田 ステノさん イラムアンカネ アコㇿ タッ アパ ポㇰタ アアマイネ iramu=an kane a=kor tat apa pok ta a=ama hine 私は思いながら 持っていた樺の皮を戸口の側に 置いて

76 織田 ステノさん オㇺケオㇺケアンカネ ヤイカタヌアニネ omkeomke=an kane yaykatanu=an hine 咳払いをしながら かしこまって

77 織田 ステノさん エネ アコㇿ ユポ イウイテキ ネクㇲ ene a=kor yupo i=uytek hi ne kus このように兄が 私を使いに出したことであるので

78 織田 ステノさん イエチウ サㇰノ ieciw sak no 遠慮無しに

79 織田 ステノさん ラッチタラ ラㇺノ アパ アンマカイネ アフㇷ゚アンコンノ ratcitara ram no apa an=maka hine ahup=an konno 静かに低く 戸口を空けて入ると

80 織田 ステノさん アペ ネアㇷ゚ ヘペクワ チセ オㇱケ エアットゥコンノアン ミケカネ シカイェカネ シㇼキ ape ne a p hepeku wa cise oske eattukonnoan mike kane sikaye kane sirki 火が輝いて家の中が なんとまあ 光輝いているのだった。

81 織田 ステノさん ヤイカタヌアニネ yaykatanu=an hine 私はかしこまって

82 織田 ステノさん アフㇷ゚アン エハㇽキソウン ahup=an eharkisoun 入った。 左座の方へ

83 織田 ステノさん ミンタㇻ オッタ アフㇷ゚アニネ モナアアニネ mintar or ta ahup=an hine monaa=an hine 土間の所に入って 座っていて

84 織田 ステノさん ヤイカタヌアンカネ アリ アペ テㇰサㇺウン インカラナクㇲ yaykatanu=an kane ari ape teksam un inkar=an akus 畏まっていたら こうして火の側を見たら

85 織田 ステノさん オシソウンマ オッカイポカ ウタㇻパケ エアットゥコンノアン カムイヘタㇷ゚ アン アイヌヘタㇷ゚ osisoun wa okkaypo ka utarpake eattukonnoan kamuy hetap an aynu hetap 右座の方に若者でも立派な人が、 なんとまあ 神であるのか 人間であるのか

86 織田 ステノさん シレトㇰ コㇿ ピㇼカ ポン オッカイポカ ウタㇽパケ siretok kor pirka pon okkaypo ka utarpake 美貌の 立派な若い首領が

87 織田 ステノさん ミナカネ ヘキルアン エカリ イコヘキル mina kane hekiru=an ekari i=kohekiru 笑いながら 私が振り向いたのと丁度同時に 私に振り向いた。

88 織田 ステノさん アンコタンタカ ポロンノ オッカイポ オカ ルウェ an=kotan (9) ta ka poronno okkaypo oka ruwe いや… 私の村にも たくさん若者がいたもの (9) an=kotanu と所属形になっていない。

89 織田 ステノさん アウタリウタㇻ ポロンノ オカイペ ネクㇲ アンヌカㇻ ヒ… a=utari utar poronno okay pe ne kus an=nukar hi… 私の一族達は たくさんいたものであったので 私がみたこと…

90 織田 ステノさん エアットゥコンノアン アンオシッコテノ アン オッカイポカ ウタㇻパケ ミナカネ イコヘキルイケ eattukonnoan an=osikkote no an okkaypo ka utarpake mina kane i=kohekiru hike なんとまあ 人が惚れぼれするような 若者の首領が 笑いながら振り向いたのに

91 織田 ステノさん ハウキアン ハウェ エネ アニ 「アコㇿ ユポ タㇷ゚ネカネ イウイテㇰワ hawki=an hawe ene an hi "a=kor yupo tapne kane i=uytek wa 私が話した話はこうであった。 「私の兄が こう言うわけで私を使いに出して

92 織田 ステノさん オッカイポ カムイ オッカイポ ニサッタ アイシコシネウェレ タヌクラン okkaypo kamuy okkaypo nisatta an=sikosinewere tan ukuran 『若者、神の若者を 明日招こうと思う。 今晩

93 織田 ステノさん エオマンマ エイェナンコㇿ アリ アコㇿ ユポ ハウキカネ e=oman wa e=ye nankor ari a=kor yupo hawki kane お前が行っていいなさい』 と兄が言いながら

94 織田 ステノさん イニサップニワ アㇽキアン ルウェ ネナ i=nisappuni wa arki=an ruwe ne na 私を突然送り出して、私が来たのですよ。

95 織田 ステノさん カムイ オッカイポ ヌワ ニサッタ シネウェヤㇰ ピㇼカ」 アリ kamuy okkaypo nu wa nisatta sinewe yak pirka" ari 神の若者よ、 聞いて明日尋ねてくれるとよいのですが」 と

96 織田 ステノさん ハウキアニネ ナニ ソイェンパアン hawki=an hine nani soyenpa=an 話して すぐに外に出て

97 織田 ステノさん アコㇿ タッ アリ アウキネ アンテㇺコㇿオマレイネ a=kor tat ari a=uk hine an=temkor'omare hine 私の樺の皮をこうして 取って抱えて

98 織田 ステノさん スネカ アカㇻカ ソモ キ インカㇻアン アリ シエトクン インカㇻアニケカ sune ka a=kar ka somo ki inkar=an ari sietok un inkar=an hikeka 松明に火も点けずに見て こうして目の前を見ても

99 織田 ステノさん シㇼマㇰナタラ ニタイ チョㇿポクン インカㇻアニケカ sirmaknatara nitay corpok un inkar=an hikeka 辺りは明るく見えていた。 林の中を見ても

100 織田 ステノさん アンナヌフ ニペキヒ アリ エアットゥコンノアン an=nanuhu nipekihi ari eattukonnoan 私の顔の輝きでもって なんとまあ

101 織田 ステノさん ネㇷ゚ アネシㇰナッカ ソモ キノ インカㇻインカㇻアンカネ ウェン アコㇿ ユポ アコヤヨマッポコン ヤイヌアンカネ nep an=esiknak ka somo ki no inkar'inkar=an kane wen a=kor yupo a=koyayomap pokon yaynu=an kane 何も見えないこともなしに ちらちらとみながら 悪い兄に対して 悔しいように 考えながら

102 織田 ステノさん サㇷ゚アンアイネ アコッチセ オッタ シレパアナクㇲ アコㇿ ユポ アコㇿ ハポ アコㇿ ミチ モコㇿカ ソモ キイネ sap=an ayne a=kor cise or ta sirepa=an akus a=kor yupo a=kor hapo a=kor mici mokor ka somo ki hine 下りた結果、 家に着いたら 兄も母も父も 眠りもせずに

103 織田 ステノさん ウチㇱタㇱパレカネ オカ チㇱカネ オカ ucistaspare kane oka cis kane oka 一緒に泣きながらいた。 泣きながらいた。

104 織田 ステノさん 「アコㇿ ユポ アコㇿ ハポ アコㇿ オナ シㇰヌアンマ トゥサアンマ サㇷ゚アン ルウェ ネ "a=kor yupo a=kor hapo a=kor ona siknu=an wa tusa=an wa sap=an ruwe ne 「兄さんも母さんも父さんも 私は生きて元気に 下りてきたよ。

105 織田 ステノさん ネㇷ゚クㇲ アコㇿ ユポ イウイテㇰワ オㇿワ チㇱカネ アン ルウェ エネ アニ アン nep kus a=kor yupo i=uytek wa or wa cis kane an ruwe ene an hi an 何しに兄さんは 私を使いに出してそれから 泣いているの。

106 織田 ステノさん アコㇿ ユポ エネ イウイテㇰ コラチ パイェアン アイネ a=kor yupo ene i=uytek koraci paye=an ayne 兄さんが私を使いに出した通りに 行ってきた。そうしたら

107 織田 ステノさん エコイポクン プッ コㇿ ナイ トゥラシ パイェアンコンノ ナイ エトㇰタ ekoypokun put kor nay turasi paye=an konno nay etok ta 西の方に河口を持った谷川に沿って上流に 行ってみたら谷川の先に

108 織田 ステノさん ピㇼカ キヌㇷ゚トイ アン キヌㇷ゚トイ ノㇱキタ pirka kinuptoy an kinuptoy noski ta 立派な山の野原があった。 その山の野原の中に

109 織田 ステノさん タㇷ゚ アカㇻ アシㇼ チセ シㇼプイロトッケカネ スプヤ ヘトゥキケ tap a=kar asir cise sirpuyrototke kane supuya hetuk hike 最近建てられた家から モクモクと、 炊事の煙が出ていたのへ

110 織田 ステノさん イエチウ サㇰノ チセ ソイタ パイェアニネ アコㇿ タッ スネネ アカㇻ タッ アアマイネ ieciw sak no cise soy ta paye=an hine a=kor tat sune ne a=kar tat a=ama hine 遠慮無しに 家の側に行って 持っていた樺の皮 松明にした樺の皮を置いて

111 織田 ステノさん イエチウ サㇰノ アフㇷ゚アナクㇲ アイヌ ニㇱパ アン ルウェ エネ アニ ieciw sak no ahup=an akus aynu nispa an ruwe ene an hi 遠慮無しに入っていったら 人間の紳士がこのような感じでいた。

112 織田 ステノさん オッカイカ ウタㇽパケ カムイヘ アン アイヌヘ アン ソレクㇲカ シレトㇰ トゥラノ okkay ka utarpake kamuy he an aynu he an sorekuska siretok turano 男の首領が 神か人間か、 それこそ美貌の

113 織田 ステノさん ピㇼカ オッカイポ モナアワ イオルン pirka okkaypo monaa wa i=or un 立派な若者が座っていて、私の方を、

114 織田 ステノさん アリ アンヌカㇻクス エカリ アリ イヌカリケ ari an=nukar kusu ekari ari i=nukar hike こうして私が見たので 同時にこうやって私の方を見たのへ

115 織田 ステノさん 「タㇷ゚ネカネ アコㇿ ユポ イウイテㇰ ルウェ ネクㇲ ニサッタ カムイ オッカイポ "tapne kane a=kor yupo i=uytek ruwe ne kus nisatta kamuy okkaypo 「このように兄が 私を使いに出したので 明日、神の若者よ、

116 織田 ステノさん シネウェヤㇰ ピㇼカ」 アリ ハウキアニネ ナニ チソイェカッタアニネ sinewe yak pirka" ari hawki=an hine nani cisoyekatta=an hine 訪問して下さると良い」 と話して すぐに外に飛び出して

117 織田 ステノさん アㇽキアン ルウェエㇱタ アンネ」 アリ ハウキアナクㇲ アコㇿ ユポ arki=an ruwe esta an ne" ari hawki=an akus a=kor yupo 来たんだ」 と話したら兄は

118 織田 ステノさん 「ソンノ イラㇺキッタ エネ アン ヤイヌカ ソモ アキ "sonno iramkitta ene an yaynu ka somo a=ki 「本当に驚いた、 こんな考えを私は持っていなかった。

119 織田 ステノさん エクㇱコンナ エネ アン アネウイテㇰ オカタ ekuskonna ene an an=e=uytek oka ta 突然このように お前を使いに出した後で

120 織田 ステノさん ネコン エイキワ エアㇷ゚カㇱ ルウェタ アン アリヤイヌアンカネ アネヤイモンポコマカネ nekon e=iki wa e=apkas ruwe ta an ari yaynu=an kane an=eyaymonpokoma kane どうやって お前が歩いていることか と考えながら 後悔しながら

121 織田 ステノさん チㇱアンカネ オカアナクㇲ アコットゥレシ cis=an kane oka=an akus a=kor turesi 泣きながらいたら 妹よ、

122 織田 ステノさん カムイ エネクㇲ エホシピワ エエㇰ」 アリ アンペ アコㇿ ユポカ アコㇿ ミチカ イェカネ kamuy e=ne kus e=hosipi wa e=ek" ari an pe a=kor yupo ka a=kor mici ka ye kane お前は神のごとく立派なので 戻ってきたのだ」 と 兄も父も言いながら

123 織田 ステノさん ラムエメスㇱパワ オピッタ モコㇿ アノカカ ホッケアン ヒネ ramuemesuspa (10) wa opitta mokor anoka ka hotke=an hine 気を取り直して全員が眠った。 私も横になって (10) 北海道教育委員会(編)(1992)『オイナ(神々の物語)2』に同じ語り手の別な物語が対訳されており、そのp.356に an=eramuimesusu kane 「私は安心しながら」とある。

124 織田 ステノさん モコㇿアン ヘンネカウン モコㇿアンクニ アンラムアクㇲ mokor=an hennekaun mokor=an kuni an=ramu akus 眠った。 まさか眠ると 思わなかったのに

125 織田 ステノさん モコㇿアンハウアンコンノ mokor=an haw'an konno 眠ってしまったのだった。すると、

126 織田 ステノさん ウクランネ パイェアンマ アンヌカㇻワ アンオシッコテア カムイ オッカイポ ミナカネ u... ukuran ne paye=an wa an=nukar wa an=osikkote a kamuy okkaypo mina kane 夕べ行って 私が見て惚れた 神の若者が笑いながら

127 織田 ステノさん イエルㇷ゚シケタ アニネ ハウキ ハウ エネ アニ i=erupsike ta an hine hawki haw ene an hi 私の枕元にいて 言った話がこのようなことであった。

128 織田 ステノさん 「タンメノコ "tan menoko 「娘よ、

129 織田 ステノさん カムイ オッタカ イサㇺ シレトㇰ エネ ルウェ アイヌ サシニカ ソモ エネ ルウェ ネ kamuy or ta ka isam siretok ne ruwe aynu sasini ka somo e=ne ruwe ne 神の所にも無い器量で お前があるのは、 人間の血筋ではなく

130 織田 ステノさん パイェカ カムイ エサンニヨワ エアン ルウェ ネクス payeka kamuy esanniyo wa e=an ruwe ne kusu 流行病の神のはからいで お前がいるためなのだ。

131 織田 ステノさん カムイ オㇿワ アンヌカㇻ エコㇿ ユポ オカアㇺキㇼ エネ アイヤイヌレワ kamuy or wa an=nukar e=kor yupo okaamkir ene an=yaynure wa 神々の元から 私が見ていた。 お前の兄をわざと このように考えさせて

132 織田 ステノさん オカアヌシ エヌカㇻヤクン oka=an usi e=nukar yakun 私がいるところをお前が見たなら

133 織田 ステノさん ニサッタ エチパイェワ nisatta eci=paye wa 明日お前たちが行って

134 織田 ステノさん アンコㇿ チセ オッタ エチシレパヤクン an=kor cise or ta eci=sirepa yakun 私の家に着いたなら

135 織田 ステノさん トイ エチオウリヤクン toy eci=ouri yakun 地面を掘ったら

136 織田 ステノさん オンネアンマ トイトイ チョㇿポㇰタ オカアン ルウェ ネナ onne=an wa ra... toytoy corpok ta oka=an ruwe ne na 私は年老いて地面の下に いるのだよ。

137 織田 ステノさん トイトイ イカ クㇲワ オカアンマ リクンモシㇼ アノリワッカ エアイカㇷ゚ toytoy i=ka kus wa oka=an wa rikunmosir an=oriwak ka eaykap 私は土を被っていて 天の国に昇天することも出来ない

138 織田 ステノさん エコㇿ ユポカ アイヌ ケウトゥㇺ コㇿクス e=kor yupo ka aynu kewtum kor kusu お前の兄も 立派な心を持つので

139 織田 ステノさん オカアㇺキㇼ アイヤイヌレワ エエㇰワ オカアヌㇱケ エヌカンルウェ ネナ okaamkir an=yaynure wa e=ek wa oka=an uske e=nukar ruwe ne na わざと考えさせてお前が来て 私がいるところをお前は見たのだよ。

140 織田 ステノさん ニサッタ ウタットゥラワ nisatta utar tura wa 明日一族のものを連れて(来なさい)

141 織田 ステノさん アンコㇿ チセ オカ エチオウリワ an=kor cise oka eci=ouri wa 私の家があった所を掘ったら

142 織田 ステノさん エチヌカンナンコンナ」 アリ タカㇻアン eci=nukar nankor na" ari takar=an 見えるだろう」 と夢を見た。

143 織田 ステノさん ウェイシㇼクㇽアンテアン wensirkur'ante=an 私はひどく驚いた。

144 織田 ステノさん モコㇿカ アネシキソ mokor ka an=esikiso 眠ることも出来ずに

145 織田 ステノさん ソンノ トイ トゥㇺ オマㇷ゚ アンヌカㇻア ルウェエンタ アン アリ ヤイヌ アネケウトゥムウェン ピㇼカ オッカイポ ネ ルウェ sonno toy tum oma p an=nukar a ruwe enta an ari yaynu (11) an=ekewtumuwen (12) pirka okka ne ruwe 本当に土の中にあるものを 私が見たのか と考えた。私が思い煩う 立派な若者であった、 (11) yaynu=an 「私は考えた」と人称がついていない。(12) 口演のあとで織田さんは質問に答えて、「好きでも好きでもいっしょに寝れないちって心悩むこと」と述べている。

146 織田 ステノさん アネケウトゥムウェンアㇷ゚ トイ トゥㇺ オマクㇲ イェ ハウェ エネ アニ アン アリ ヤイヌアンカネ an=ekewtumuwen a p toy tum oma kus ye hawe ene an hi an ari yaynu=an kane 私が思い煩っていたものが 土の中に入っていると いうのか と考えながら

147 織田 ステノさん ホプンパアニネ スケアンヒネ hopunpa=an hine suke=an hine 私は起きて 料理をして

148 織田 ステノさん イペウシ アニネ アコㇿ ハポ アコㇿ ミチ オピッタ ホプンパ ヤㇱケイネ ipe usi an hine a=kor hapo a=kor mici opitta hopunpa yaske hine 食事をするころになって 私の母も父も みんな起きた。 顔を洗って

149 織田 ステノさん イペ エトㇰタ アコㇿ ミチカ アタカレ ipe etok ta a=kor mici ka a=takare 食事をする前に 私の父も夢を見せられ、

150 織田 ステノさん アコㇿ ユポカ タカㇻノイネ オンカミア オンカミア a=kor yupo ka takar noyne onkami a onkami a 兄も夢を見たらしく 何度も礼拝をした。

151 織田 ステノさん イペ オカ アニネ シッチャㇱヌカアナクㇲ 「ヘタㇰ アコットゥレシ シピニ アウタリウタㇻ アンニスㇰワ アトゥラナ」 アリ ipe oka an hine sitcasnuka=an akus "hetak a=kor turesi sipini a=utari utar an=nisuk wa a=tura na" ari 食事をし終えて 片づけを終えたら 「さあ、妹よ、身支度を整えろ。 私は一族を頼って 連れてくるよ」 と

152 織田 ステノさん アコㇿ ユポ ハウキカネ ピカン シピニ キイネ ソイェネワ イサㇺ a=kor yupo hawki kane pikan sipini ki hine soyene wa isam 兄は言いながら 素早く身支度を整えて 外に出ていった。

153 織田 ステノさん オカケタ シピンパアン ota... okake ta sipinpa=an その後で私は身支度を整えた。

154 織田 ステノさん 「アマッネポ "a=matnepo 「娘よ、

155 織田 ステノさん エユピヒ エトゥラワ スイ エアㇷ゚カㇱ シリエンタ アン」 アリ アンペ アコㇿ オナ アコㇿ ハポ イェイケ e=yupihi e=tura wa suy e=apkas siri enta an" ari an pe a=kor ona a=kor hapo ye hike お前は兄を連れてまた 出かけるつもりなのか」 と 私の父、母は言ったけれど

156 織田 ステノさん 「タㇷ゚ネカネ アコㇿ ユポ イェカネ ソイェネㇷ゚ ネナ ソイェンパアン "tapne kane a=kor yupo ye kane soyene p ne na soyenpa=an 「このようなことを兄は言いながら 外に出ていったのですよ。 私は外に出て

157 織田 ステノさん パイェアンマ ネオッカイポ アヌㇱケ アネラムアンクㇲ paye=an wa ne okkaypo an uske an=eramuan kus いって その若者がいる所を 知っているので

158 織田 ステノさん アウタリウタㇻ アコㇿ ユポ アネチャココ」アリ アンペ アイェカネ オカアン ラポㇰタ アコㇿ ユポ イネヘンパㇰ オッカイポ トゥライネ アㇽキ a=utari utar a=kor yupo an=ecakoko" ari an pe a=ye kane oka=an rapokta a=kor yupo inehempak okkaypo tura hine arki 一族のものと兄に 教えます」ということを 私が言っている内に 兄は 何人も若者を連れて 来た。

159 織田 ステノさん ペッ トゥラシ ホㇱキノポ テㇾケアン pet turasi hoski nopo terke=an 川沿いに上流へと真っ先に 私は走って

160 織田 ステノさん パイェアンアイネ 「ソンノ イラㇺキッタ クロマトタ paye=an ayne "sonno ira... iramkitta kuromato ta いったあげく 「本当に驚いた、 夜に

161 織田 ステノさん コタン コンニㇱパ コットゥレシ ウイテックㇲ イラㇺキッタララ」 アリ kotan kor nispa kor turesi uytek kus iramkittarara" ari 村長の 妹を使いに出したというので 驚いた」 と

162 織田 ステノさん オッカイポウタㇻ ラメトㇰウタㇻ ハウキカネ イオㇱ アㇽキ ホㇱキノ テㇾケアンマ okkaypo utar rametok utar hawki kane i=os arki hoski no terke=an wa 若者たち、勇者達が 言いながら私の後から来た。 先に私が走って

163 織田 ステノさん パイェアンアイネ ネナイ プッタ paye=an ayne ne nay put ta いったあげく その谷川の入り口に

164 織田 ステノさん シレパアニケ ナイ トゥラシ リコテㇾケアン sirepa=an hike nay turasi rikoterke=an 辿り着いたところ 谷川に沿って私は駆け上がっていった。

165 織田 ステノさん アウタリウタㇻ アㇽキ a=utari utar arki 私の一族達が来た。

166 織田 ステノさん ナイ エトㇰタ アㇽキアニネ キヌ... キヌムットイ タアンタ アンマ オッタ アシㇼ チセ アㇱワ nay etok ta arki=an hine kinu... kinumuttoy (13) taan ta an wa or ta asir cise as wa 谷川の前に来て、 山の野原が ここにあってそこに 新しい家が建って (13) kinuptoy と言うつもりだったか。

167 織田 ステノさん オッタ アフㇷ゚アンマ オッカイポ アノシッコテ or ta ahup=an wa okkaypo an=osikkote そこに私は入って 若者に惚れて

168 織田 ステノさん アネケウトゥムウェンカネ サㇷ゚アンアㇷ゚ an=ekewtumuwen kane sap=an a p 私が思い煩いながら下りて戻ったのに、

169 織田 ステノさん ネチセ コッカ イサㇺ ne cise kot ka isam その家の跡もない。

170 織田 ステノさん ネチセカ イサㇺ ne cise ka isam その家もない。

171 織田 ステノさん 「ソンノ ウクランネ タアンタ チセ アㇱワ "sonno ukuran ne taan ta cise as wa 「ほんとうに、夕べは ここに家が建っていて

172 織田 ステノさん オッタ アフㇷ゚アンアㇷ゚ タアニ ネアㇷ゚タㇷ゚タ チセカ イサㇺ ソンノ イラㇺキッタ or ta ahup=an a p taani ne a p tapta cise ka isam sonno iramkitta" そこに私は入ったのに、 確かにここだったのに、 家も無い。本当に驚いた」

173 織田 ステノさん アリ ハウキアン ari hawki=an と私は言った。

174 織田 ステノさん 「アウタリウタㇻ タアニ オウリワ インカㇻヤン "a=utari utar taani ouri wa inkar yan 「私の一族達よ、 この場所を掘って見てください。

175 織田 ステノさん ネㇷ゚カ カムイ ヤイカッチピ ルスイクㇲ nep ka kamuy yaykatcipi rusuy kus 何か神が甦りたいので

176 織田 ステノさん ラウォマワ アンマクス タカㇻカ アキ rawoma wa an wa kusu takar ka a=ki 地下に埋まっているので私に夢を見せ、

177 織田 ステノさん アンヌカㇻカ キㇷ゚ ネアㇷ゚タㇷ゚タ」 アリ ハウキアンカネ an=nukar ka ki p ne a p tapta" ari hawki=an kane 会いもしたのです」 と私が言いながら

178 織田 ステノさん アコㇿ ユポウタㇻ アウタリウタㇻ ナニ オウリア オウリアアクㇲ a=kor yupo utar a=utari utar nani ouri a ouri a akus 兄たち、一族達が すぐに皆で掘って掘って、そうしたら、

179 織田 ステノさん イオクンヌカ ネイ ヘンパラ トイ トゥㇺ オマ シンルッケワ iokunnuka ney (14) hempara toy tum oma sirrutke wa かわいそうに いつ、土の中に入ったのか 地滑りが起きて (14) ney は通常「どこ」。言い差しか。

180 織田 ステノさん トイ トゥㇺ オマ ルウェ ヘ アン チセコㇿカムイ トイ トゥンマ アイサンケ toy tum oma ruwe he an cisekorkamuy toy tum wa an=sanke 土の中に入ったのか、 家の守り神さまが 土の中から掘り出された。

181 織田 ステノさん 「ヘㇺカ オヨヨ チセコㇿカムイ タアンタ テエタ "hemka oyoyo cisekorkamuy taan ta teeta 「大変だ、家の守り神さまが、 ここにかつて

182 織田 ステノさん チセ アㇱワ cise as wa 家が建っていて

183 織田 ステノさん トイ ルッケワ カムイ トイ… トイ トゥㇺ オマ ルウェ ネ ハウアン」 アリ toy rutke wa kamuy toy ... toy tum oma ruwe ne haw'an" ari 地滑りが起きて 神が土の、土の中に入った ことなのであったのだな」 と

184 織田 ステノさん アコㇿ ユポ アウタリウタㇻ ハウキカネ ネチセコㇿカムイ トイトイェヘ アピルピルイネ ネㇷ゚タ アコカㇽカリイネ a=kor yupo a=utari utar hawki kane ne cisekorkamuy toytoyehe a=pirupiru hine nep ta a=kokarkari hine 私の兄、私の一族達は 話しながら その家の守り神さまの土を 人々は何度も拭って 何かそれに巻きつけて

185 織田 ステノさん アコッチセ オッタ サㇷ゚アンマ a=kor cise or ta sap=an wa 家へと下りて、

186 織田 ステノさん ロルンプヤㇻ タㇷ゚カタ アコㇿ ユポ アマイネ rorunpuyar tapka ta a=kor yupo ama hine 横座の窓の上に 兄は(家の守り神さまを)置いて

187 織田 ステノさん アフニネ ahun hine 家に入って

188 織田 ステノさん アウタリ ウタㇽカ オピッタ アフピネ アコㇿ ミチ アコウウェペケンヌ a=utari utar ka opitta ahup hine a=kor mici a=kouwepekennu 私の一族達もみんな入って 父に尋ねた

189 織田 ステノさん 「タㇷ゚ネカネ ネ ルウェ ネ」 アリ アンペ "tapne kane ne ruwe ne" ari an pe 「このようなことであったのですが」 と聞くと

190 織田 ステノさん 「イラㇺキッタ "iramkitta 「驚いた、

191 織田 ステノさん テエタ テエタアナㇰ ピㇱカンタ キㇺペカ アウタリウタㇻ シヌイナッカ キ クチャコㇿカ キワ オッタ teeta teeta anak piskan ta kim peka a=utari utar sinuynak ka ki kucakor ka ki wa or ta 昔、昔は、まわりに 山の方に私の一族達が 隠れ住みもし、狩小屋に泊まりもして、 そこで

192 織田 ステノさん オンネヤッカ アエランペテㇰ チセコㇿカムイ トイ トゥㇺ オマ ハウェ ネヤクン シノ ウタㇻパ チセ コチヒ ネ ハウェ ネヤッカ onne yakka a=erampetek cisekorkamuy toy tum oma hawe ne yakun sino utarpa cise kocihi ne hawe ne yakka 年老いて死んでも 私たちは分からずにいた。 家の守り神さまが 土の中に埋もれた話であったら 本当の首領の家の跡である 話であっても

193 織田 ステノさん パセ カムイ リワッ エアイカㇷ゚ワ タカンネ pase kamuy riwat (15) eak... eaykap wa takar ne 重き神は昇天出来ずに それを夢として (15) 奥田統己(編)(1999)『アイヌ語静内方言文脈つき語彙集(CDーROMつき)』には「riwak昇天する」とあるがここでは riwat と聞こえる。後に riwak とも発音されている。

194 織田 ステノさん アコㇿ マッネポカ ヌカㇻ アノカカ アンヌカㇻ」 アリ アンペ アコㇿ ユポカ イェ アコㇿ ミチカ イェカネ a=kor matnepo ka nukar anoka ka an=nukar" ari an pe a=kor yupo ka ye a=kor mici ka ye kane 娘も見、 私も見た」 と兄も言い、 父も言いながら

195 織田 ステノさん オッカイポウタㇻ イナウネニ トゥイパクㇲ ウテㇾケレ okkaypo utar inawneni tuypa kus uterkere 若者達は イナウになる木を切るために皆で走った。

196 織田 ステノさん カプ カㇻウタㇻ カプ カㇻ オㇿワ kapu kar utar kapu kar or wa 皮を剥く者たちは皮を剥き、それから

197 織田 ステノさん イナウケウタㇻ イナウケイネ イキアチセコㇿカムイ オウセ モトチ トイ トゥンマ アイサンケ カムイ アシㇼ コソンテ アンミレ アコチュㇷ゚チュプ inawke utar inawke hine ikia cisekorkamuy ouse motoci toy tum wa an=sanke kamuy asir kosonte an=mire (16) a=kocupcupu イナウを削る者たちはイナウを削って 例の家の守り神さま、ただ骨格を 土の中から私が出した神を 新しい上等の着物を着せて 包んだ。 (16) 静内地方の cisekorkamuy は木の棒型の胴体の周囲に削り掛けを縛りつけた姿をしている。 motoci 「骨格」とはそれが土のなかで胴体だけになったこと、 asir kosonte an=mire 「新しい着物を着せる」とは新たに削り掛けをつけることを指しているのだろう。北の生活文庫企画編集会議(編)(1998)『北の生活文庫 第7巻 北海道の口承文芸』口絵写真3を参照。

198 織田 ステノさん カムイネ ヤイェアシㇼカㇻワ リクンモシㇼ オリワッ クニ kamuy ne yayeasirkar wa rikunmosir oriwat kuni 神として元の姿に戻って 天の国に昇天できるように

199 織田 ステノさん アコㇿ ユポ アコㇿ ミチ イェカネ アペエトㇰタ a=kor yupo a=kor mici ye kane apeetok ta 兄も父も言いながら 囲炉裏の上座に

200 織田 ステノさん カムイ アアイヌコㇿ シリ アンヌカㇻワ ソンノ イラㇺキッタ kamuy a=aynukor siri an=nukar wa sonno iramkitta 神を敬う様子を 私は見て、本当に驚いた。

201 織田 ステノさん アイヌ ネワ アンヌカㇻペ ネアㇷ゚ aynu ne wa an=nukar pe ne a p 人間であって、 私が会ったものであったのに

202 織田 ステノさん オウセ モトチ チセ… チセコㇿカムイ アンヌカㇻ アロラムンノ カムイ ケウトゥㇺ アリ ouse motoci cise ... cisekorkamuy an=nukar aroramunno kamuy kewtum ari ただ骨格だけの家の守り神さまを 私が見て、 何の深い考えもなく神の心で

203 織田 ステノさん コㇿ シレトㇰ イヌカレア ルウェエンタ イオクンヌカ アリ ヤイヌアン kor siretok i=nukare a ruwe enta iokunnuka ari yaynu=an その持つ美貌を私に見せたのか、 可哀想に、と、考えた。

204 織田 ステノさん ネカムイ アシㇼ コソンテ アネアシㇼカㇻワ リクンモシㇼ オリワックニ カムイノミアン ハウェ アンヌワ ポオ アネケウトゥムウェン ne kamuy asir kosonte an=easirkar wa rikunmosir osik... oriwak kuni kamuynomi=an hawe an=nu wa poo an=ekewtumuwen その神の新しい着物を 私たちは新しく作って 天の国に昇天できるように 神に祈った声を私は聞いて なお一層私は思い煩った。

205 織田 ステノさん イラㇺキッタ ヘル アイヌ ネヤクン iramkitta heru aynu ne yakun 驚いた、人間同士であったなら

206 織田 ステノさん スケポカ アリ ヤイヌアナクス アロワチキ suke poka (17) ari yaynu=an akusu arowaciki 料理だけでも、と考えていたら 思いがけず (17) 結婚したい女性の気持ちを控えめに表す表現。

207 織田 ステノさん パセ カムイ ネワ ヤイェアシㇼカㇻ リクンモシㇼ オリワㇰ ルスイクㇲ イアㇷ゚カㇱテア ルウェエンタ アコㇿ ユポ ケウトゥム プンプニワ パイェカアンマ pase kamuy ne wa yayeasirkar rikunmosir oriwak rusuy kus i=apkaste a ruwe enta a=kor yupo kewtumu punpuni (18) wa pa... payeka=an wa 重き神であって元の姿に戻って 天の国に昇天したいために 私を出かけさせたのか。 兄の心をせき立てて 私は出かけて、 (18) 口演のあとで織田さんは質問に答えて、「何もわからないっていうの、こういうふうに言え、ああいうふうに言えちって、あの兄貴の気持ち、わからん、兄貴も知らないこと、今度カムイにこう言え、ああ言って妹使って寄こせっていうこと」と述べている。

208 織田 ステノさん アンヌカㇻワ ポオ アネケウトゥムウェン アリ ヤイヌアン ケウトゥムウェンアン an=nukar wa poo an=ekewtumuwen ari yaynu=an kewtumuwen=an 私は出かけて、会って、 なお一層思い煩った、 と私は考えた。 私は思い煩って

209 織田 ステノさん エシッケウウン シキㇼパアンコンノ ヤイコヌペアシアンカネ esikkew'un sikirpa=an konno yaykonupeasi=an kane 隅の方に向かうと 一人涙を流しながら

210 織田 ステノさん スケエトコイキアニネ ネチセコㇿカムイ カムイ ホプニ オッカㇱタ アンホプニレ sukeetokoyki=an hine ne cisekorkamuy kamuy hopuni okkas ta an=hopunire 料理の支度をして その家の守り神さまを 常よりもなお丁寧に 私たちは送った。

211 織田 ステノさん アコタヌウン ニㇱパウタㇻ アコㇿ ユポ アコㇿ ミチ ネカムイ ソレクㇲカ パセ カムイ ネクㇲ a=kotanu un nispa utar a=kor yupo a=kor mici ne kamuy sorekuska pase kamuy ne kus 私の村に住む 紳士達、私の兄、父が その神が、 それこそ重き神であるので

212 織田 ステノさん パセ カムイ リクンモシㇼ オシキルクニ カムイ ノミ ハウェ キサㇻアナㇰ ヤイカタヌカ ソモ ネクㇲ アンヌカネ スケエトコイキアン pase kamuy rikunmosir osikiru kuni kamuy nomi hawe kisar anak yaykatanu ka somo (19) ne kus an=nu kane sukeetokoyki=an 重き神が、 天の国に向かうように 神に祈る声を 耳は慎むこともしないものであるので 私は聞きながら 料理の準備をした。 (19) somo と ne のあいだには何も発音されていない。

213 織田 ステノさん カムイ ホプニ エトㇰタ ウサアマㇺカ アイスパ ウサルㇽカ アカㇻ kamuy hopuni etok ta usa amam ka an=supa usa rur ka a=kar 神が飛び立つ前に 穀物も炊いて 汁も作り、

214 織田 ステノさん ウサシトカ アカㇻワ カムイ ソレクㇲカ usa sito ka a=kar wa kamuy sorekuska 団子も作って、 神は、それこそ

215 織田 ステノさん タネ パㇰノ トイ トゥㇺタ イペルスイカネ アナ ルウェ オモウン アン アリ アンペ ネ スケ アキワ tane pakno toy tum ta iperusuy kane an a ruwe omoun an ari an pe ne suke a... a=ki wa 今まで 土の中で腹を空かせながら いたのではないか、 と 料理をして

216 織田 ステノさん カムイ アコイプニ アコㇿ ユポ アコㇿ ミチ kamuy a=koipuni a=kor yupo a=kor mici 神に差し出した。 兄も父も

217 織田 ステノさん 「カムイアイヌコㇿアンコンノ タア コラチ シㇼキㇷ゚ ネ」 アリ アンペ アコㇿ ハポカ イェㇷ゚ ネクㇲ "kamuy'aynukor=an konno taa koraci sirki p ne" ari an pe a=kor hapo ka ye p ne kus 「私たちが神を敬う時は このようにするものだ」 と 母も言うものであったので

218 織田 ステノさん イェ コラチ カムイチャロオスケアニネ ye koraci kamuycaroosuke=an hine 言うとおりに 神に食事を作って

219 織田 ステノさん カムイ アンホプニレワ イサㇺ オカタ kamuy an=hopunire wa isam oka ta 神を送った後で

220 織田 ステノさん カムイ エケウトゥムウェン アキカネ ホッケアナクㇲ kamuy ekewtumuwen a=ki kane hotke=an akus 神を思い煩いながら 私が横になったら、

221 織田 ステノさん カムイ ソレクㇲカ アシㇼ コソンテ ミワ kamuy sorekuska asir koto... kosonte mi wa 神が、 それこそ新しい上等の着物を着て

222 織田 ステノさん ナフン テエタ アンヌカㇻ シレトㇰ アッカリ シレトㇰ コㇿワ nahun (20) teeta an=nukar siretok akkari siretok kor wa 以前に、 かつて私が見た美貌を越えた 美貌を持って (20) 奥田統己(編)(1999)『アイヌ語静内方言文脈つき語彙集(CDーROMつき)』には「以前に(意味未詳)」とある。同書の記述を支える新たな用例である。

223 織田 ステノさん ミナカネ 「タンアイヌ オペㇾ イタカンチㇰ ピㇼカノ エヌ mina kane "tan aynu oper itak=an cik pirka no e=nu 笑いながら 「これこれ、人間のお嬢ちゃん、 私が話すのを よく聞きなさい。

224 織田 ステノさん エアニアナㇰネ トイトゥㇺオマアン ラポㇰワノ エケウトゥム エコㇿ シレトㇰ エコㇿ ラメトㇰ アネシキンマ アネエプンキネワ eani anakne toytum'oma=an rapok wano e=kewtumu e=kor siretok e=kor rametok an=esikin (21) wa an=e=epunkine wa お前は 土の中に私がいた頃から お前の心、お前の美貌、 勇気を 私は気に入ってお前を守って (21) esikin は意味未詳。

225 織田 ステノさん オカアㇺキㇼ アネイムレ okaamkir an=e=imure わざとイムをさせていた。

226 織田 ステノさん アネイムレワ エコㇿ ユポ エコㇿ ミチ ハポ エミナカネ オカ ルウェ ネワ an=e=imure wa e=kor yupo e=kor mici hapo emina kane oka ruwe ne wa イムをさせて 兄や父、母は それを笑いながらいたのであって

227 織田 ステノさん リクンモシッタ シレパアンマ kamuy ... rikunmosir ta sirepa=an wa 天の国に私が到着して

228 織田 ステノさん トゥッコ レㇽコ シネチュㇷ゚ トゥチュㇷ゚ オカアイヤクン tutko rerko sine cup tu cup oka=an yakun 二日三日、一月二月 暮らしたら

229 織田 ステノさん アネタㇰワ リクンモシッタ an=e=tak wa rikunmosir ta お前を呼び寄せて 天の国に

230 織田 ステノさん カムイネ ヘルカムイネ ウヘコッパアン ルウェ ネナ kamuy ne heru kamuy ne uhekotpa=an ruwe ne na 神として、 同じ神同士で 一緒に暮らすのだ。

231 織田 ステノさん アイヌ オペㇾ ピㇼカノ ヌワ aynu oper pirka no nu wa 人間のお嬢ちゃん、良く聞いて

232 織田 ステノさん アネタㇰ パㇰノ アリキキワ エコㇿ ハポ エコㇿ ミチ チャロオスケ」 アリ タカㇻ an=e=tak pakno arikiki wa e=kor hapo e=kor mici caro osuke" ari takar (22) 私がお前を呼び寄せるまで頑張って、 お前の母や父 食事の支度をしなさい」 と夢を見た。 (22) takar の人称接辞は聞こえない。

233 織田 ステノさん タア シレトㇰ アッカリ ソレクㇲカ taa siretok akkari sorekuska これほどの、以前の美しさを越えて、 それこそ、

234 織田 ステノさん シレトㇰ コㇿペ ネクㇲ モイナㇰアン オウンノ ケウトゥムウェンアン siretok kor pe ne kus io... moynak=an ounno kewtumuwen=an 美しいものであったので 目覚めてからずっと 私は思い煩っていた

235 織田 ステノさん チㇱアンカネ エㇺコタ カムイ イタㇰヤㇰ ピㇼカ アリ ヤイヌアンカネ cis=an kane emkota kamuy i=tak yak pirka ari yaynu=an kane 私は泣きながら、 神が早く私を呼び寄せてくれると良いのに、 と考えながら

236 織田 ステノさん アコㇿ ユポ アコㇿ ミ… アクス ホプンパアナクㇲ アコㇿ ミチ アコㇿ ユポ オンカミロㇰ オンカミロㇰ a=kor yupo a=kor mi... akusu hopunpa=an akus a=kor mici a=kor yupo onkami rok onkami rok 私の兄や父… そうしたら 私が起きたら 父も兄も 何度も礼拝しながら

237 織田 ステノさん 「カムイ ソレクㇲ パセ カムイ アコットゥレシ エシキンマ タックㇲ エㇰ ルウェ ネ アリ アン タカㇻアン ルウェ ネ "kamuy sorekus pase kamuy a=kor turesi esikin wa tak kus ek ruwe ne ari an takan ruwe ne 「神が、それこそ重き神が 妹を 気に入って呼び寄せるために来たのだ という夢を見た。

238 織田 ステノさん オリパㇰ トゥラ イキアイヤッカ カムイコヘポキアン」 アリ アンペ アコㇿ ユポ イェカネ oripak tura iki=an yakka kamuykohepoki=an" ari an pe a=kor yupo ye kane 恐れながらするのであっても 神に頭を下げる」 と兄も言いながら

239 織田 ステノさん オンカミア オンカミア アコㇿ ミチカ ネコラチ onkami a onkami a a=kor mici ka ne koraci 何度も礼拝した。 父もそのように

240 織田 ステノさん 「アコㇿ マッネポ カムイ オㇿワ アネシキンマ "a=kor matnepo kamuy or wa an=esikin wa 「娘が 神に見初められて

241 織田 ステノさん アタㇰ パㇰノ アマッネポ アンヌカㇻ アトゥラヤクン a=tak pakno a=matnepo an=nukar a=tura yakun 呼び寄せられるまで私は見ている。 連れて行かれたら

242 織田 ステノさん アンヌカㇻカ エアイカㇷ゚」 アリ アンペ アコㇿ ミチカ アコㇿ ハポカ イェカネ an=nukar ka eaypak... eaykap"ari an pe a=kor mici ka a=kor hapo ka ye kane 会うこともできない」 と父も 母も言いながら

243 織田 ステノさん スケアンマ アコㇿ ハポ アコㇿ ミチ チャロ アノスケカネ オカアン suke=an wa a=kor hapo a=kor mici caro an=osuke kane oka=an 私は料理をして 母と父に 食事を作りながら暮らしていた。

244 織田 ステノさん ケウトゥムウェンアン kewtumuwen=an 私は思い煩って、

245 織田 ステノさん オッカイポ カムイ オッカイポ アネシカルン okkaypo kamuy okkaypo an=eskarun 若者、神の若者を 忘れがたく、

246 織田 ステノさん ケウトゥムウェンアン kewtumuwen=an 思い煩った。

247 織田 ステノさん ヘㇺタ ヤイヌ アキカネ オカアン ラポキタ hemta (23) yaynu a=ki kane oka=an rapokita 考えることを しながら暮らしていた間に (23) hemtaは意味未詳。

248 織田 ステノさん カムイ オㇿワ アニタㇰワ kamuy or wa an=i=tak wa 神の所から私は呼び寄せられて

249 織田 ステノさん リクンモシッタ アニトゥラ ルウェ ネコトㇺアンマ カムイ ヘコテ アキ rikunmosir ta an=i=tura ruwe ne kotom'an wa kamuy hekote a=ki 天の国に 連れられていく様子であるらしくて 神と連れ添うことを私はした。

250 織田 ステノさん アイヌ エシㇰオㇷ゚ アイヌ アンネアコㇿカ aynu esik'o p aynu an=ne a korka 人間に生まれたもの、 人間で私はあるけれど

251 織田 ステノさん リクンモシッタ カムイ パセ カムイ イオシッコテワ リクンモシッタ rikunmosir ta kamuy pase kamuy i=osikkote wa rikunmosir ta 天の国の神、重き神が 私に惚れて 天の国に

252 織田 ステノさん オカアンマ ヤヨカンナシ アイヌモシㇼ アコシㇰスイェ oka=an wa yayokannasi aynumosir a=kosiksuye 私たちが暮らして 空の上から 人間の国に目を向けると

253 織田 ステノさん アコㇿ ユポカ ヤイラメコテワ ポ トゥㇺ オマ アコㇿ ミチ アコㇿ ハポ は カムイカㇻオンネワ イサㇺ オカタ アコㇿ ユポ ポ トゥㇺ オマ ウタリウタㇻ ウテㇾケレ a=kor yupo ka yayramekote wa po tum oma a=kor mici a=kor hapo は (24) kamuykar'onne wa isam oka ta a=kor yupo po tum oma utari utar uterkere 兄も結婚して 子供に囲まれていた。 父と母は 寿命が来て亡くなった後で 兄は子供に囲まれて 一族達は皆で走り回り、 (24) wa と聞こえるが日本語の助詞の「は」であろう。

254 織田 ステノさん エキㇺネクㇲ パイェカ シリカ アンヌカㇻ ekimne kus payeka siri ka an=nukar 狩りに行くために歩き回る様子も 私は見た、

255 織田 ステノさん メノコアナㇰトイケㇱペキウシ アンコンノ トイ カㇻ シㇼ ヤヨカンナシ アンヌカㇻ アウタリウタㇻ アネプンキネカネ オカアンクㇲ タㇷ゚ アイェナ アリ menoko anak toykespeki (25) usi an konno toy kar siri yayokannasi an=nukar a=utari utar an=epunkine kane oka=an kus tap a=ye na ari 女は 畑に何でも作る時期になると 畑を耕す様子を 空の上から私は見た。 私の一族達を守りながら 暮らすのです、とこそ、私が言ったのです。 と、 (25) toykespeki は織田さんによれば「畑に何でも作ること」(1989年12月29日録音)である。

256 織田 ステノさん ネイウン メノコ ネヤ カムイ チセコㇿカムイ オㇿワ アノシッコテ アイヌ メノコ リクンモシㇼ オシキルワ ney un menoko ne ya kamuy cisekorkamuy or wa an=osikkote aynu menoko rikunmo osikiru wa どこの女であるか 神さま、家の守り神さまに 惚れられた 人間の女が天の国に向かって

257 織田 ステノさん リクンモシㇼワ ヤユタㇻエプンキネ アリ アン ウウェペケㇾ タㇰネ ウウェペケㇾ rikunmosir wa yayutar'epunkine ari an uwepeker takne uwepeker 天の国から自分の一族を守った、 という物語 短い物語。